24. Driving, Surfing, and Sciencing
Published on Sep 01, 2019
Episode summary
PCR法の発明者であるKary Mullis博士追悼回。PCRの原理と初期プロトコルやKary Mullisの生涯、爆速DNAポリメラーゼ、DNAを用いたハミルトン経路問題の計算(DNA computing)について話しました。
Starring
Show notes
- Kary Mullis (Wikipedia)…PCRの発明者。1993年のノーベル化学賞を受賞
- Kary Mullis (Web Site)
- Kary Mullis: Play! Experiment! Discover!…Kary MullisのTEDプレゼンテーション(2002)。
- 何か知りたいことがあれば、自分で実験し、観察し、記録し、法則性を見つけよ
- アイデアから始めよ、自分で試し、ドンドン改良せよ
- 権威に頼るな (時には必要であるが)
- 自分の行為に正直でなければならない
- Sons of Sputnik: Kary Mullis at TEDxOrangeCoast…青春時代、ロケットを作っていた話をKaryが熱心にしている。
- Polymerase Chain Reaction: PCR (Wikipedia)…テンプレートDNAから目的領域のDNAを増幅させることができる。分子生物学に必須の基本方法。Denature->Annealing->Extensionのステップを繰り返すことでDNAは指数的に増幅されていく。例えば20回のサイクルではN^20=1,048,576分子に増える。
- PCRのトラブルシューティングまとめ
- Enzymatic amplification of beta-globin genomic sequences and restriction site analysis for diagnosis of sickle cell anemia…Saiki et al. Science 1985. PCRの最初の論文。現在とプロトコルはほとんど変わっていないが、当時はDNA polymeraseとして、Klenowを用いていたため、温度を上げてDenatureさせた後はKlenowを新しく入れる必要があった (高温になるとKlenowが失活するため)。このため、サイクル反応のたびにどんどん反応容量が増えていき、最終的には140uLのうち、30%ちかくがKlenowになる。
- Specific enzymatic amplification of DNA in vitro: the polymerase chain reaction…PCR初期の論文
- Specific synthesis of DNA in vitro via a polymerase-catalyzed chain reaction…PCR初期の論文
- Primer-directed enzymatic amplification of DNA with a thermostable DNA polymerase…イエローストーン国立公園でとられた好熱細菌であるThermus aquaticusから取られたDNA polymeraseであるTaqを応用したPCRの論文。今のPCRの原型となる。被引用数としてはこの論文が一番PCR関連の中では多い。(2019年現在、被引用数は2万越え)
- Thermus aquaticus…イエローストーン国立公園で単離された好熱細菌。DNA polymeraseであるTaqはこの菌から取られた。
- 5x NEB Phusion Polymerase Buffer…このようにPCRのバッファーだけも売っている。
- Thermus thermophilus…伊豆にある峰温泉で取られた好熱細菌。
- 数兆円の経済効果–PCRの発見…古市泰宏先生によるPCRをめぐる当時の状況とKary Mullisの回顧録。当時の雰囲気を感じ取ることができる。
- Cosmological Significance of Time Reversal…Kary Mullisが24歳の時にかいた物理の論文。
- KOD DNA Polymerase…国産の耐熱性DNAポリメラーゼ。鹿児島県小宝島の硫気孔から今中先生らにより単離された超好熱始原菌 Thermococcus kodakarensis KOD 1株に由来している。
- 小宝島…鹿児島の小宝島。一度聖地巡礼で行きたい。
- 小宝島小・中学校…小宝島には小中学校があり、生徒はいま10人、先生も10人だそうです。鹿児島の本港南埠頭から約12時間で行けるそうです。行ってみたい。のどかな雰囲気が伝わってくる。
- 超好熱菌由来の新規DNAポリメラーゼの発見とその産業利用…上記のKODの発見などに関する今中先生らによる記事。
- 峰温泉
- PrimeSTAR® Max DNA Polymerase…Takaraの開発した伸長反応が5秒/1kbという驚異的な速度かつ精度を誇るDNAポリメラーゼ。
- 縁から中心を捉える科学-好熱菌を通して…大島泰郎先生による好熱菌研究のエピソード
- Leonard Adleman (Wikipedia)…DNA computingを初めて行ったAdlemanはRSA暗号の提案によって2002年にチューリング賞を受賞している。
- Molecular computation of solutions to combinatorial problems. Science 1994…PCRを用いることによって7個の頂点からなるハミルトン経路問題を解くことを示した論文。DNA computingにおける最初の例。PDFが読めますので興味があればぜひ。
- グラフ理論 (Wikipedia)
- RSA暗号 (Wikipedia)…RSAのAはAdlemanのA。
- ハミルトン閉路問題…ハミルトン閉路問題における、閉路の条件を取り除いたものがハミルトン経路問題。
- DNA computing (Wikipedia)…未踏の領域。
- NP完全問題を解くDNAコンピューター…日本語のDNAコンピューターに関する解説
- Solution of a 20-Variable 3-SAT Problem on a DNA Computer. Science 2002…AdlemanによるDNAコンピューター第二弾の論文。
- Scaling up molecular pattern recognition with DNA-based winner-take-all neural networks. Nature 2018
Editorial notes
- DNAやその基礎反応を利用したコンピューティング技術についてもっと色々と考えていきたいですね (soh)
- アイデアを次々と試していきたい (tadasu)