7. In the golden age of molecular biology
Published on Apr 25, 2019
Episode summary
シドニー・ブレナー博士特集回(前半)。RNAタイクラブ、シドニー・ブレナーによる遺伝暗号解明へのアプローチ、ガモフの仮説、コドンとアミノ酸の対応関係、ファージを用いた遺伝学について、1950~60年初頭に出版された当時の原著論文を紹介し、分子生物学の黎明期における美しい実験や大胆な仮説と発見のドラマについて話しました。
Starring
Show Notes
- Sydney Brenner (Microsoft Academic)… シドニー・ブレナー博士の業績一覧
- RNA Tie Club… RNAタイクラブでは、DNA上の情報を元にタンパク質が作られる仕組みを解明しようとした。構成メンバー数はアミノ酸の数にならい20人。メンバーは二重らせん柄のネクタイを締めアミノ酸由来のコードネームを持っていた。ガモフ: アラニン、クリック: チロシン、ワトソン:プロリン、ブレナー:バリン。20人中8人がノーベル賞を受賞した。モットーは”do or die; or don’t try”だった。
- The most beautiful wrong ideas in science… ガモフのダイアモンド仮説について、当時の状況や考察が書かれている。タイトルが秀逸。
- On the impossibility of all overlapping triplet codes in information transfer from nucleic acid to proteins. (Brenner. PNAS, 1957.)… ブレナーが3文字からなるオーバーラップコドン仮説を否定した論文。当時既知であったアミノ酸配列を用いて、簡単な計算からとても美しい回答を出した。付録にあるアミノ酸配列一覧は必見。
- Possible Relation between Deoxyribonucleic Acid and Protein Structures. (Gamow. Nature. 1954.)
- Mattew Meselson… メセルソンはDNAの半保存的複製を同位体標識を用いることで証明した後、mRNAの証明にブレナーとヤコブとともに取り組んだ。ブレナーとヤコブはそれぞれ、線虫の研究とオペロンの研究でノーベル賞を受賞したが、メセルソンは未だ受賞できていない。
- An unstable intermediate carrying information from genes to ribosomes for protein synthesis. (Brenner, Jacob, Meselson. Nature, 1961.)
- A Most “Elegant” Experiment: Sydney Brenner, Francois Jacob, Mathew Meselson, and the Discovery of Messenger RNA… 当時のヤコブ目線でmRNA発見時のエピソードが色々と書かれている。リボソームの分離がうまくいかなくて苦しんでいたが、マグネシウムを大量にいれることで解決した。
- ポール・チャールズ・ザメクニック
- マーロン・ホーグランド
- General nature of the genetic code for proteins. (Crick, Barnett, Brenner, Watts-tobin. Nature, 1961.)… ファージを用いた実験によって、塩基が欠質するごとにフレームシフトが起きることを示し、また3塩基の欠質によって復活する部分があることを示した。これによりコドンの3塩基性(もしくは3の倍数)、コドンがオーバラップしていない、カンマになるような部分はない(comma-free model)、一つのアミノ酸が複数のコドンによってコードされる、ことが示された(示唆された)。
- Marshall Nirenberg… ニーレンバーグは遺伝学や分子生物学のバックグラウンドを持たなかったが、思い切って新分野に挑戦した。まず彼が取り掛かったのは、論文を読むために速読をマスターすること、ということは興味深い。
- The dependence of cell-free protein synthesis in E. coli upon naturally occurring or synthetic polyribonucleotides. (Nirenberg and Matthaei. PNAS, 1961.)… ニーレンバーグとマッシー(マタエイのほうが一般的?)によって、UUUがフェニルアラニンをコードしていることを示した論文。ニーレンバーグはRNAネクタイクラブのメンバーではなかったが、コドンとアミノ酸の対応を最初に解明し、最終的に64個のコドンのうち50以上のコドンは彼のグループによって解明された。
- TRAC (プログラミング言語)
- Writing my own computing language for Trac… ブレナーはこのTRACのインタプリタを書いたことがあるらしい。
- A speculation on the origin of protein synthesis. (Crick, Brenner, Klug, Pieczenik. Origns of Life, 1976.)
補足資料
- T4ファージを用いた遺伝解析… このpodcastをやる前にしっかりこの資料を読んでおくべきだった。遺伝学やT4ファージの実験についての理解が低いため、クリックとブレナーの1961年の論文の説明に関してはDNA組み換えの観点から説明するべきだった。すばらしい資料。
- <走馬灯の逆廻しエッセイ> 第18話 「ゲノムコードの解読」Nirenberg… mRNAキャップを発見された古市先生によるニーレンバーグ論文の解説。なぜ、彼らだけがこの実験を行えたのか、なぜpoly(U)配列だったのか、など素晴らしい解説が盛りだくさんである。他の記事も非常におもしろく、podcast放送後に勉強させていただいた。